給与明細を見て「こんなに引かれるの?」と感じたことはありませんか?額面と手取りの差を生むのが控除です。控除には大きく分けて「社会保険料」と「税金」の2種類があり、それぞれに計算のルールがあります。
この記事では、給与から天引きされる控除項目を一つずつ解説し、「何のために」「いくら」引かれているのかを明確にします。
控除の全体像
給与から差し引かれる控除は、次の2つに大別されます。
| 分類 | 含まれる項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険・子育て支援金 | 医療・年金・失業・介護・子育て支援のための公的な保険制度 |
| 税金 | 所得税(源泉徴収)・住民税(特別徴収) | 国と自治体の財源 |
このほか、会社独自の天引き(財形貯蓄、社宅費、組合費など)がある場合もあります。
社会保険料の内訳
健康保険料
病院での医療費を3割負担にするための保険です。会社員は協会けんぽか健康保険組合のいずれかに加入します。
保険料は「標準報酬月額」に保険料率を掛けて算出され、会社と折半で負担します。料率は都道府県や健保組合によって異なり、協会けんぽの全国平均は約10%(自己負担は約5%)です。
毎年4〜6月に支払われた給与(残業代・通勤手当含む)の平均を、等級表に当てはめて決まる金額です。9月に改定され、翌年8月まで適用されます。4〜6月に残業が多いと保険料が上がる仕組みです。
厚生年金保険料
老齢年金・障害年金・遺族年金の財源となる保険料です。料率は18.3%で固定されており、会社と折半するため自己負担は9.15%です。
標準報酬月額の上限は65万円(2026年度)のため、月収65万円以上の人は保険料が頭打ちになります。
雇用保険料
失業した際の失業給付、育児休業給付、教育訓練給付の財源です。2026年度の労働者負担率は0.6%です(事業主負担は0.95%)。
社会保険料の中では金額が小さいものの、失業時のセーフティネットとして重要な制度です。
介護保険料
40歳以上の方のみ天引きされます。高齢者の介護サービスの財源で、健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。協会けんぽの場合、2026年度は約1.6%(自己負担は約0.8%)です。
子育て支援金(2026年4月〜新設)
2026年4月から新たに創設された制度です。少子化対策のための財源として、健康保険料に上乗せして徴収されます。初年度の料率は約0.04%と低水準ですが、段階的に引き上げが予定されています。
子育て支援金が新たに控除項目に追加されたことで、2026年4月以降の手取りは前月比でわずかに減少しています。給与明細をチェックして、新しい項目が反映されているか確認しましょう。
税金の内訳
所得税(源泉徴収)
毎月の給与から概算で天引きされる国税です。課税対象は「額面給与 − 非課税手当 − 社会保険料」で、ここに源泉徴収税額表を当てはめて月々の税額が決まります。
所得税は累進課税で、所得が多いほど税率が上がります。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
年末調整で、生命保険料控除・配偶者控除・住宅ローン控除などが精算され、過不足が調整されます。
住民税(特別徴収)
前年の所得に対して課税される地方税です。税率は全国一律で10%(都道府県4% + 市区町村6%)に、均等割(年5,000円前後)が加算されます。
6月に新年度の税額が確定し、6月〜翌年5月の12回で分割天引きされます。そのため毎年6月は住民税額が変わるタイミングです。
入社1年目は前年の所得がないため住民税が0円です。2年目の6月から天引きが始まるため、「2年目に手取りが減った」と感じる人が多いですが、これは正常な動きです。
月収30万円の控除内訳シミュレーション
独身・40歳未満・扶養なし・協会けんぽ(東京)の場合の月額控除イメージです。
| 控除項目 | 月額(概算) | 割合 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約15,000円 | 5.0% |
| 厚生年金保険料 | 約27,450円 | 9.15% |
| 雇用保険料 | 約1,800円 | 0.6% |
| 子育て支援金 | 約120円 | 0.04% |
| 所得税 | 約6,750円 | 2.3% |
| 住民税 | 約14,000円 | 4.7% |
| 控除合計 | 約65,120円 | 21.7% |
額面30万円に対して約6.5万円が控除され、手取りは約23.5万円となります。
控除額を確認するときのチェックポイント
毎年9月の社会保険料改定
4〜6月の給与平均で標準報酬月額が見直されます。この時期に残業が多かった場合、9月以降の保険料が上がる可能性があります。
毎年6月の住民税更新
前年の確定所得に基づいた新しい住民税額が適用されます。昇給やボーナスが増えた翌年は住民税も増えるため注意が必要です。
年末調整後の12月・1月
生命保険料控除や住宅ローン控除の精算が行われ、過払い分が還付されるタイミングです。12月の手取りが普段より多い場合、年末調整による還付が含まれています。
まとめ
給与から天引きされる控除は、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険・子育て支援金)と税金(所得税・住民税)で構成されています。それぞれ計算のルールや改定タイミングが異なるため、毎月の給与明細をチェックして変動を把握する習慣が大切です。自分の控除がどこにどう使われているかを知ることが、賢い家計管理の基本になります。